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最高裁判所第三小法廷 昭和49年(あ)1390号 決定

本店所在地

岐阜県各務原市成清町六二六番地の一

酒井産業株式会社

右代表者代表取締役

酒井正男

右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和四九年五月一五日名古屋高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人六川詔勝の上告趣意は、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己)

○昭和四九年(あ)第一三九〇号

被告人 酒井産業株式会社

弁護人六川詔勝の上告趣意(昭和四九年七月三一日付)

原判決は、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められ判決に影響を及ぼすべき重大なる事実誤認がある。

(理由)

一、原判決は、昭和三三年五月三一日犯則期首に於ける仮受金として処理された事の当否につき、これを否定し、いずれも被告会社の資産として認めたが、これは事実誤認であり又その認定の結果が、自動的に、本被告事件のその後の各年度に於ける資産を個人帰属と見るか、被告会社の帰属と見るかが決定されるため重大であり、当然判決に重大な影響を及ぼすと言うべきである。

二、被告会社が、犯則期首に於て仮受金として計上した資産は、現金・当座預金・定期預金・受取手形及び商品であり、これを酒井一政名義の当座預金により運用し、被告会社とは何等計理上混同した運用をして来たものではない。そしてそれらは昭和三三年五月三一日犯則期首迄に定期預金となつたものである。

三、右の間の定期預金の利息及び被告会社への貸付利息も未確定ではなく定期預金利息は、銀行証明又貸付利息は、酒井一政名義の当座預金への入金によつて明白である。原判決は定期預金の継続性は認められないとか名義が変つているとか言うが、定期預金は解約された事はなく、又このような事があれば、定期預金が犯則期首に於て現存されるものではない。この点は定期預金移動明細表を見れば明らかである。

四、従つて又本被告事件に於ける各事業年度に於ける右定期預金の利息、株式配当、運用益及び貸金の回収益もすべて個人に帰属すると認めるべきである。

以上の次第であり、その事実誤認は、判決に影響を及ぼし、これを破棄しなければ、著しく正義に反する故、刑事訴訟法第四一一条第一項三号により上告した次第である。

以上

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